五木村の山々が色づき始めた、10月半ば。鶴崎益喜さん、稔さん兄弟の地ばちみつ採りに同行させてもらった。
二人が蜂蜜採りをするようになったのは、40歳の頃。知人の誘いで始め、もう40年ほど続けている。
五木村では、「ハチウト」と呼ばれる、杉の丸太をくり抜いた筒形の巣箱が多く使われる。下部に数か所、ミツバチが出入りするための小さな穴を開け、上部には板を打ち付け天井にする。雨よけにトタン板の屋根を乗せて、ミツバチが好みそうな場所を選んで設置する。鶴崎さん宅では、自宅の前庭や裏山の畑、少し離れた山すそなどに、10個ほどのハチウトを据えている。
野生の日本ミツバチに巣を作ってもらい、その蜂蜜を採らせてもらう。シンプルながら、巣箱の造りや設置する場所、管理にコツや工夫が必要で簡単ではない。鶴崎さん兄弟のハチウトも、新しい巣にうまくミツバチが入ってくれなかったり、途中でアカバチ(キイロスズメバチ)や害虫に襲われたりして、空っぽのまま終わるものも半分ほどだという。
二人が軽トラで向かったのは、標高600mほどの山の中。くぬぎ林の下、山茶の茂る木かげにハチウトが2つ。片方は、今年は空だったと言う。道具を入れた大きな籠を背負い、斜面を歩いてハチウトへ向かう。
トタン屋根を外し、大人でひと抱えほどもあるハチウトを逆さにしてのぞき込むと、ミツバチがぎっしりと身を寄せ合い、ブンブンとうなるような羽音を立てている。なかなか壮観だ。
早速作業が始まる。兄の益喜さんは作業しやすいようにと、周辺の地ならし。弟の稔さんはハチウトを逆さにすると、持参した2mほどの木の棒をそばに立てた。棒の先端に麻袋を引っかけ、袋の裾をゴム紐でハチウトに縛る。麻袋は片側が切り開かれ、ちょうど三角帽のような恰好をしている。