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山の恵みのおすそわけ地ばちみつのモノがたり
ハチさんイラスト

年に一度の山の恵み
五木の自然が育む地はちみつ

二人は両手に金づちを持ち、ハチウトの側面を叩き始めた。
トントントントン… 刺激に驚いたミツバチはブンブンと飛び回り、一見するとハチの大群に襲われているような光景に思わずたじろぐ。

「日本ミツバチはおとなしか性格じゃっで、めったなことじゃ刺さんばい」。
怖気づく私を見て、帽子に付けたネット越しに、稔さんがニコリとほほ笑む。
二人でハチウトの周りをまんべんなく叩いていくうちに、ミツバチたちが麻袋へ上り始め、やがてほとんどのミツバチが移動し終えると、袋ごと近くの木に立てかけておく。
ハチウトの中から、10段ほど並んだ板状の黄色い巣が姿を表した。どこまで採って、どこから先は残しておくかを二人で決めてから、いよいよ巣の採取に取りかかる。稔さんの担当だ。

ハチウトから巣を取り出す際の道具は、既製品ではなく、それぞれが工夫した手作りの道具を用いる。稔さん愛用の道具は、古い大きなノコギリを裁断加工して作った、細長いヘラと、先の曲がったヘラの2本。細長いヘラを、横に倒したハチウトの壁と巣の間にすべり込ませる。壁面から外れたら、先の曲がったヘラを入れ、ハチウトの天井部と巣の間を切り離すと、両手で長さ40㎝ほどの楕円形の平らな巣を抱えて取り出し、樽に入れる。

3段ほど残して取り終えると、再びハチウトを逆さにして屋根を乗せ、元通りに戻す。
「ミツバチが冬ば越せるよう、食料ば残しておかんと」と、益喜さん。
蜂蜜をすべて採ってしまえば、ミツバチは花の少ない冬を乗り越える食料を失い、死んでしまう。全体の3割ほど残しておけば、冬越ししてまた来年同じハチウトに巣を作り、子孫を残してくれるという。自然の恵みに感謝し、自然と長く共生してきた村びとの知恵だ。

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