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芽吹きの季節のお楽しみ 山の恵みのモノがたり

命みなぎる山の春

冬の間、寒々とした表情に覆われていた山肌が、一斉に鮮やかな新緑に包まれる、春。
白みがかった黄緑、黄色を帯びた薄緑、赤み混じりの緑、少しくすんだ黄緑――五木の山は、落葉広葉樹のさまざまな萌黄色が複雑に混じり合い、杉やヒノキ、カシなどの常緑樹の濃い緑とよく映え、目に眩しく輝く。

新緑と山桜の季節が来ると、村びとたちは、そわそわと山へ向かう。大地や木々から芽吹いたばかりの柔らかな山菜やタケノコを、旬の一番おいしい時期を見極めて収穫しなければならないからだ。

カァバクショウ(ハナウド)、フキノトウ、ワラビ、ゼンマイ、サド(イタドリ)、タラノメ、コシアブラ、ドゼン(ヤマウド)、フツ(ヨモギ)、フキ、葉ワサビ、クサギナ、ノビル、コゴミ、サンショウの葉など、2月の終わりから6月にかけて、五木の野山に芽吹いた命が次々と姿を表す。

山から分けてもらった山菜は、天ぷらや白和え、味噌汁の具に。茹でたりさらしてアク抜きし、酢味噌を添えたり、砂糖醤油で炒めたり、油味噌にしたり。旬ならではの味を楽しんだ後は、塩漬けや乾燥させたり冷凍して、わが家の1年分の保存食となる。自家消費分に少し多過ぎる時は、道の駅物産館へも出荷される。

伝統の技で一年間おいしく

「乾燥ワラビもうまかばってん、私は塩漬けが好き」と話すのは、下谷地区の土肥オトイさん。出ル羽地区に生まれ、誰もが知る山菜採りとワラビ塩漬けの名人だ。

旬に収穫した黄緑や薄紫のワラビは、庭先の羽釜でさっと茹で、水切りをした後にたっぷりの塩と交互に樽に漬け込んで、重石をしてしっかり水を抜く。
「うちは母ちゃんに、こまんか時からやり方ば叩き込まれたですけん。ぎゃんしとけば、いつまっでん良か。水にさらせばすぐに塩が抜け、生に近いトロっとした食感で色もきれか。煮しめや山菜おこわも良かし、甘酢に漬けてもうまかばい」。

ワラビに、人参、玉ねぎ、ピーマン、生姜の千切りを加え、甘酢に漬けた手づくりのワラビ甘酢漬けは、出ル羽で食べた母のレシピ。見た目も彩り良く、食べるとワラビ独特のトロみが楽しめる。塩漬けワラビを使って、年中作って味わうのだと言う。

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