0
¥0

現在カート内に商品はございません。

受け継いだ在来種を次の世代へ 五木赤大根のモノがたり

暮らしに根付いた五木の伝統野菜

日本各地には、気候や風土などその土地の条件に合って進化、選抜され、人びとの暮らしと結びつき、受け継がれてきた地域固有の在来作物がある。
五木赤大根は、五木村に伝わるそんな在来作物の1つだ。

熊本県の「くまもとふるさと伝統野菜」にも指定され、現在、子別峠(こべっとう)や出ル羽(いずるは)、大藪など、標高の高い場所にある小集落で7世帯ほどが栽培している。戸別に種を取り、何代にも渡って受け継がれてきたものだ。

一般的にスーパーなどで目にする品種改良された白大根や赤大根と比べると、五木赤大根はやや小ぶりで固い。鮮やかな赤い色と食感の良さは、甘酢漬けや酢の物にすると引き立つ。酢と反応して濃いピンク色に発色し、コリコリした食感を楽しむことができる。煮物にすると色は褪せるが、煮くずれしにくい。新鮮なまま生で食べると甘みも強い。間引き菜は浅漬けにも利用され、古くは大根葉も茹で干しして冬場の保存食となった。外皮に筋状の模様が多く入り、冬の寒さに強い点も特徴だ。

多くは自家消費用だが、生産者の一人である犬童照男さんは、50年余りに渡って五木赤大根を生産、販売してきた。
標高1000mに近い子別峠集落に、犬童さんを訪ねた。

在来野菜を地域の特産品に

子別峠は戦後に開拓された地区で、犬童さんも4歳の時に両親と共に入植した。当時、山間地の集落では今のような白大根の種は手に入らず、大根と言えば五木赤大根だけ。煮たり味噌漬けにしたり、あらゆる料理で日常的に使う身近な大根だった。

成人した犬童さんは、やがて五木農協で働くように。出ル羽や白岩戸、入鴨などでは赤大根が作り続けられていたが、太くやわらかく品種改良された白大根の種も簡単に手に入るようになり、いつしか赤大根は畑や食卓から遠のいていた。
「赤大根の色はそのままで、白大根のように太くやわらかい大根ができないだろうか」。
ある日、犬童さんが仕事で出ル羽集落を回ると、村の人から相談を受けた。
その当時、赤大根の種は今のように店で市販はされておらず、まだ珍しい野菜だった。犬童さんは農業振興という仕事柄、五木赤大根を特産化し、市場に出せる農作物にできないかと考えるようになった。

しかしその頃の五木赤大根は、小さく堅いだけでなく、色もまちまち。赤いと言っても、濃い赤と薄いピンク色の大根が混じり、芯の部分も放射線状に赤い色が広がっていたり真っ白だったりとバラバラだった。特産化し流通に乗せるには特性を均一化させる必要がある。犬童さんの研究と長い挑戦が始まった。

  • 現在のページ
  • 2ページ目へ
  • 次のページへ進む
ページトップへ